『幸涙鳴響(こうるいめいきょう)〜誰も知らない館の話〜』
「アナタ」の手に包まれたその日から 「ワタシ」はここをぬけだせない
いつしかなくことも忘れて でも「アナタ」はキライで
ある日「アナタ」は来なくなった 何日も何日も来なくなった
不意に音を立てる扉「ワタシ」を外へ誘(いざな)う
「アナタ」は「ワタシ」を捕まえてなどいなかった
姿を見せない「アナタ」を探す
やっと見つけた「アナタ」はやけに冷たくて
「アナタ」の冷たい指の腹で頬を撫でられ顔を上げると
「ワタシ」はもう逃げないわ
ああ 「ワタシ」は やっと“幸せ”を手に入れた
朝日を浴びて 日差しに照らされたのに
fin
弱ってるところを助けられて飼われてたんだけど彼女は自由を奪われたとずっと思ってて。
世話をしてくれるからなにも苦労はしなくていいけど、そんな風に与えられる幸せに納得できなくて。
でもきっと最初から彼のことは好きだったんだと思います。案外意地っ張りなのかも?
最後、彼は一人で天命を迎えようとしていました。他に人もいない古い洋館で彼が亡くなっても気づく人はいないはずでした。
彼女が来てくれた時彼は本当に嬉しかったのではないでしょうか。
彼女も再び弱りきっていたのは当然のこと。毎日ご飯をくれてきた彼が何日も来なかったので、彼女はずっと何も食べてませんでした。それでも彼女がつかんだものは、彼女にとって幸せな…大切な気持ちでした。
ちなみにこの話、下書きの時点では「悲涙鳴響」って題でした;;
打ち込んだときに「悲涙」が一発で出たからもしかしてそういう単語があるのかな?って思って(知らずにつけました;;)電子辞書で調べてみたら「悲しくて流す涙」(そりゃそうだ)とありまして。
題を考えたときは悲しい話だからと思ってそうつけたけど、改めて意味を考えると主人公は形はどうあれもう悲しんでないわけだから、悲涙じゃないのでは…?ってことで急きょ変更。
(2011/2/15 加筆修正)