『くろねこのしっぽ』

 

さむいなー……
はらへった……
人間たちはこんな寒い夜になにをそんなにたのしそうなんだろうなぁ。
街がきらきら光ってきれいだけど、食べられないんじゃつまんねーよー……あぁはらへった……。
おれ、ネコ。まだコネコ。
ちょっと前まであったかい家に住んでたんだけど、なんでだか今こんな寒い外にほうりだされてる。「ばいばい」っていわれたから、もうかえれないんだと思う。おれ悪いことしたのかな。キョウダイたちとケンカしたからかな。……おれ、しんじゃうのかな。
「あれ、こんなとこにニャンコがへたれてる」
うとうとーっとしてたら、なんか人間が声をかけてきた。なんだこいつ。おんなのこ、だなぁ。めがねしてて、あったかそうな格好してる。それに…うまそうな匂いがする袋をもってる!
いいな、いいな! なんだよそれ、おれにもくれよ!
「なんだニャンコ、急にげんき出てきたねー。これが気になんのか?」
袋から出てきたのは……変な色のさかな。でもさっきよりもいっぱいいい匂いがする……。はらへったー……!
じっとみてると、そいつはさかなのしっぽをちょっとだけちぎっておれの前においてくれた。くんくんと匂いをたのしんでからかぶりついてみたら、びっくりした。これ、あったかくてすっげーうまい!!
「首輪がないね……。それに汚れちゃって、捨て猫? お前、ご主人いるの?」
ごしゅじん? ごしゅじんはもういねーよ。くびわ、さいしょからつけてもらえなかったぞ。さかなをもぐもぐしてたら、ひょいと持ち上げられた。ん、うまいもんくれたし許す。
「……ニャンコ、うちくる?」
お前んち? おれが? 「とりあえずもっとちゃんとしたもの食わせてあげられるよ」
そうかそうか! それならいってやらなくもないぞ!
「じゃあ名前つけたげなきゃねぇ。なにがいいかな」
かっこいいのつけろよ。おれはくろねこだからな、くーるで、ないすがいな感じがいいぞ。
むかいあって考えてたら、なんかひやっと冷たいもんが上からおちてきた。なんだ? 白くてちっこい。
「おお、雪降ってきた! すごいねぇ、ホワイトクリスマスだよ。一人ででも晩御飯の買出しに出たかいがあったってもんだね」
ゆき?これ、ゆきっていうのか。こいつ、つかまえてもつかまえてもいなくなるな……むむむ、てごわい。おれのが強いんだぞ、えい、えいっ。
「ニャンコ、雪が気に入ったん? ふふー、かわいいねぇ」
ちがうって、おれはこいつより上なんだぞ。
「ではでは、雪見でもしながら帰りますか」
ってオイ、おれの名前はどうなったんだよ。聞けよ、てきとーなヤツだな。
「……そうだ、君の名前ね、“雪”って書いて「せつ」ってのはどうかなぁ」
せつ……?変な名前だな。「ゆきってかいて」ってなんだ。おれはこいつと同じ名前なのか?
なぁ、よくわかんねーよ。
お前の名前も、わかんねーよ。

なぁ、おれのごしゅじん。
しっぽがこごえて、寒いぞ。

クリスマスの夜の出会いには、君と二人でたい焼きを。 (そうそう……あたし、沙久っていうの)
(すー……)
(……んん? 雪、あんた寝てんの?)

 

fin
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飼い主のモデルは私…ゆえに喋り方がかなり変。一定じゃない。これでもデフォった方←
これシリーズ化したいです。

 

(2011/5/4 加筆修正)
沙久