こいつとすごす、20回目のクリスマス。
俺ら、いつまで幼馴染やってんだろうな。

 

『オカンシリーズ2「オカンへクリスマスプレゼント」』

 

「ったく、サークル仲間でクリスマスパーティーとか……正直面倒くさいんだよな」
大あくびと共に部屋を出る。大学生になりこの古びたアパートに住み始めてからもう2年と大分たった。どうせ用事もないだろうと強制参加を決め込んだ先輩の黒い笑顔を思い出し、悪寒がした。一人で過ごすのがそんなにイヤか、俺ら巻き込むほどイヤなのか。
(まあどうせ俺だって一緒に過ごす相手は幼馴染程度だけど……)
それでも、カレンダーにレギュラー入りしてるイベント日を不本意な形でつぶすのは、どこかもったいなく感じた。しかも集合時間よりかなり早く我が家をでたのは、もう一つのヤッカイゴトのためなのだ。俺の幼馴染は、なんの因縁かこのアパートに引っ越してからも隣人として付き合う羽目になっている。毎度毎度俺が面倒見る事になるんだ。…詳しくは、シリーズ1を見るといいよとか宣伝してみとく。
預けられっぱなしのそいつの部屋の鍵(俺完全に危険視されてない、逆に危うい)でドアを開けると、案の定布団の塊が目に入った。
「……なつみ」
「……イヤ」
「起・き・ろ」
「ね・む・い」
……うっわー。俺今すっげイラッときてる。うん、自分でもわかるよ。こういうときはまず深呼吸だよな。
「お前も呼び出し食らってるメンバーだろうが!! なつみがサボった場合先輩に嫌味言われんの俺なんだぞ、んなの納得いくか!」
「じゃあ圭介も行かなきゃいいじゃん……」
そうはいくかと布団に近づいていくと、なつみが面倒そうにそこから首を出した。わー、本当眠そうな顔。
「もう寝かせてよ……クリスマスプレゼントあげるから許して……」
ちょいちょいと手招きをされ、しゃがんだところをグイと引っ張られた。半端な姿勢だったせいで弱い力でも簡単にバランスが崩れ――……俺は、なぜか、なつみの布団の中に引きずり込まれていた。
「……おい。なんのつもりだ……シャレのつもりか」
薄暗くなった視界いっぱいに見える顔に焦り視線をそらすと、細い腕がするりと首に巻きついてきた。
「ちょ、こら……っ?!」
“クリスマスプレゼントあげるから”。その言葉の意味を想像してしまい頬がカッと熱くなるのがわかった。
すっと閉じられた瞳に、心臓が跳ね上がる。いったいどうしたら――……
「添い寝、したげる。圭介もプレゼント、忘れないでね……」
最後のほうは「す――……」という寝息に溶けていく。
…え?クリスマスプレゼント=添い寝?しかもちゃっかり催促ですか? (お前が寝たいだけだろ……っ)
大げさなくらいにため息をつく。俺の緊張を、返せ。
「なつみ、起きろ……頼むから起きてくれ」
もともと寝ぼけていたのか、もうすでに意識を手放したらしいなつみはなかなか腕をほどいてくれなかった。

 

俺ら、幼馴染で。その関係はきっとこれからも変わらない。
でも俺が男ってことぐらい、覚えててくれてもいいんじゃねぇの?

至近距離の唇から気を紛らわすため、オレは先輩への言い訳を考えていた。

 

(……んー、あれ、圭介おはよ……。そこでなにしてんの?)
(……お前に襲われてんの)

 

fin
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かなり久々だなオカン…!!
何気にシリーズ…化?
こんなイベントに乗っからないと出てこないなんてそれでいいのか!
しかも今回オカン化しなかった…(え
とりあえずこの二人はいつまでたっても恋に目覚めない(笑)

 

(2011/2/13 加筆修正)
沙久