突然だが、俺の好きな子は、地味だ。

 

『恋するLips』

 

 まずどうしてこんな話になったかというと……そうだな、まず自己紹介から始めよう。
 俺の名前は安達守(あだち まもる)。都立高校に通う極一般的な男子だ。どの辺が一般的かというと、サラリーマンの父を持ち、ローンの残る家に住み、ここらの地域ではまあまあな学校に通ってて。その中でも頭はそこそこだがスポーツは……いや、ちょっと見栄を張りたかっただけだ……要するに運動もまあまあ。普通すぎるだろ?
 とはいえ、そんな俺にも彼女がいる。同じクラスの結城香代(ゆうき かよ)だ。何をするにも控えめで大人しく、将来は良妻賢母を地でいくのではと思わせる性格で、それなのに少し頑固なとこもまた可愛かったり……こほん。そういう話じゃなかったな。
 ここで冒頭に戻るわけだが、香代は今時の女子高生なるものの中では地味な方だ。オシャレに興味がないとかいうわけではないらしいが、どうにもこう華やかさがない。変わりにマイナスイオンならでてるんだ。癒されるのは確か。
「それなのに……なんだろうなこの違和感は」
 自分の机に肘をつき呟く。香代に今朝会ってからどうも気になってるんだ。香代がいつもと違う。だけど何が違うのかわからない。だが、なんといったらいいか、うーん……むらむら?いやそうじゃなくて、ドキドキとか、そんな感じがする。
「いいよなぁ安達!」
 一人で首を捻る俺に、前の席の奴がニヤニヤと笑いながら話しかけてきた。
「んだよ、数学で問題あてられなかったことがそんなに羨ましいのか。幸せのハードル低いねお前」
「低い方が得だろーがよ。……ってそうじゃねぇよ、結城ちゃんのことだって!」
 気安いちゃん付けを禁止したい衝動と闘いながら眉を寄せると、「あり、気付いてない?」と驚かれてしまった。
 むしろなんでお前は気付いてんだコラ。
「あれ絶対安達のためだろー? かっわいいよな、普段はしないのに――……」
「待て待て待てっ言うな!! 一人で考える!」
 真剣な顔の俺を満足するまで笑い倒すと、ソイツは前に向き直った。

 

***

 

「……安達くん? どうしてそんな難しい顔してるの?」
「あ、いや……」
 変なの、と優しく微笑む姿が可愛すぎる。それなのに放課後一緒に帰ってる今この時も今朝からの疑問は結局解決していないのだ。
(なんだ? 何が違うんだ……)
 自分よりずっと小柄な恋人を見つめる。俺の視線に気付かずに柔らかそうな唇を動かし話続けている香代。……なんだろう。さっきから思ってはいたんだが……。
(あー、キスしてぇ)
 俺はきょろりと辺りを見てから、細い肩を右手で捕まえ不意討ちで顔を寄せた。大きく開かれた丸い目の中に俺が映っている。
「あ、安達く――……っ」
「……あ! わかった!!」
 香代が驚いてあげた声を遮るように言う。そうか、そうだったんだ。
「え? え? 何が……?」
 困惑する香代に至近距離のままにっこりと笑いかける。
「今朝からずっと、俺が香代にキスしたくなってた理由」
「えぇ?! ……んむぅっ」
軽くとは言えないくらいにその口を塞いでやる。真っ赤な顔が、可愛かったから。

 

今日のところは君が悪い。

 

香代のいつもと違うところは、ほんのりと淡いピンク色のグロスでキラキラしてる唇だったんだ。

 

fin
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なんかむずがゆいようなグダ甘話(^^;
どうした沙久、何があった。貴様の思考はついにショートしたか←
これ、最近放映された新しい口紅のCM見てどうしても書きたくなったんですよ。あれすっごくかわゆい。
んでもって実はこのサイトにあんまいないと思うマイナスイオンガールの登場。もっと喋らせたかったな!
きっと友達あたりに勧められて、ちょこっと付けてみたんですね^^
気づいてもらえると思ってなかったのでめっちゃびっくりした…みたいな感じかな?
本当は最後のオマケ会話で「もう…唇に私のグロス、うつっちゃってるよ…?」とかいうセリフもあったんですが。
私はいったい何を目指しているのかという自問ののちにキレイに削除(笑)

 

(2011/9/7 加筆修正)
沙久