「君がいるから、私は飛べる」
それはとても美しくて  汚(けが)れた言葉

 

『君色中毒』

 

地上には当たり前のように人間が暮らしているみたいに。
雲の上には昔から天使が住んでいる。
ねぇ、それって素敵な話でしょう?
私は生まれたときから白い翼を背負ってる。これは空に住む天使の証。鳥よりも繊細で、綺麗に輝いて。みんなは自分の翼を磨くことに夢中だわ。でもね、私の羽は他のと違うの。美しく光を浴びながら舞う、他の天使たちとは全然違う。だって、だって私は。
「おはようシェイルス! 良い朝だね!」
いつものようにぼんやりと窓の人を見ていると、ガットが扉を開けて部屋に入ってきた。私と同じ年に生まれた天使の男の子。ガットは明るくて優しい人だ。私なんかにも親切にしてくれる。
「おはよう、ガット。今日も下の世界につれてってくれる?」
「もちろん! 僕もシェイルスと遊びに行きたいしね、まかせといてよ!!」
私は空を飛ぶのも一人じゃままならない。私の背中には方翼。理由なんてわからないけど、生まれつき片方しかなくて、天使なのに空も舞えないわ。親にも嘆かれて、周りからは当然のことのように蔑まれた。だけど、ガットは私を空へ導いてくれる。みんなみたいにニンゲン達の世界に遊びに行くこともできない私の手を取ってくれたおかげで、彼となら私は飛べた。だから私はいつもガットに抱かれて空を飛ぶの。
「おいで。ほら、ちゃんとつかまってるんだよ? 僕非力なほうだからシェイルスを落としちゃわないかいつも不安なんだ」ガットの言葉に笑みを返しガットの体に腕を回すと、彼はホントなんだよと唇をとがらせた。
彼は優しい。私の背を見て指を指す人とも違うし、私に向けられる微笑みは本物。私の唯一の友達なんだ。
細い肩をぎゅっと抱きなおす。彼が私だけのものになってしまえばいいのに。……でもそれだけじゃ足りないわ。彼にとって世界が私だけじゃないと。彼からも必要とされたいの。私が彼を必要とするように……同じように。
「シェイルス? どうしたの? なにをそんなに笑ってるのさ」
「なんでもないわ。さあ、早く。早く飛んで」
これは恋?いいえ、そんなきれいなものじゃないわ。

麻薬のように私を犯す、依存症状。

あ な た が い な い と 生 き て い け な い 。  

 

fin
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なんか痛いよ(・д・)
純粋そうなガットに対して、シェイルスがやたらダーク…
初のファンタジー系なのにねorz
なんだか短編って純愛路線から若干それ気味?;;

 

(2011/2/13 加筆修正)
沙久