これは冴が中学3年生だった頃(一弥の影響を一番受けてた時期(汗)の何気ない一日のお話。でも冴目線じゃありません。

 

『どきどきの理由』〜ストロベ連載番外編〜

 

「ユキー!!」
 明るい茶髪の女の子を見つけ、思いっきり名前を呼んだ。
「おう、真弓っ!」
 可愛い顔なのになんとも男前な返事を返され、おれはこっそり苦笑い。あ、真弓っておれのことね。真弓卓志(まゆみ たくし)って名前なんだ。変わってるだろ? それでユキはおれの親友の雪村冴のこと。みんなと同じようにセーラー服を来てるのに、なんというか、ホント男前。小柄なおれなんかよりずっとかっこいいんだよな。
「ユキさ、この間ラジカセほしいっていってただろ? 部活の先輩が新しいの買ったから今持ってるやつ譲ってくれるって!」
「マジで?! どんなのどんなの、ぜってーほしい!!」
「えっとな、こう青くて強そうな……」
 おれらが盛り上がってると、女子はイヤな目でユキを見るし、男子はにやにやとおれを見てくる。男女が仲良くしてるのがそんなにおかしいものかと納得がいかない。ユキなんかは色目がどうのなんて言われてるのを聞いたことあるけど、こんなに裏表のない良い奴の悪口いうのなんてただの嫉妬だと思うよ。おれの大事な親友なんだ。女の子だけど女の子っぽくなくて、なんだろ、意識しなくていい……? うーん、なんか違う。とにかくアイツはおれの憧れ!
「真弓? なぁ聞いてんのー? おーい」
「わわっ、ごめん聞いてなかった!」
 いけない、自分の世界に入ってた。ごめんねと両手を合わせて謝ると、ユキはふわりと優しく微笑んだ。
(わ……かわいい)
 少しドキッとした。こんな表情もするんだ。
「真弓、男にしとくのもったいないよ。今の顔かわいすぎ!」
 長い髪をキレイに揺らしながらそんなことを言わないで。
「私もそんな風になれたらなー」
 君の方がずっと素敵なのに。
「ね、真弓」
「……そんなに褒めんなよー。ユキにどきどきしちゃうじゃないか!」
 茶化していうと「何それ」ユキはおかしそうに笑った。ちょこっとだけ、ホントのこと言ったんだけどな。

 

 どきどきの理由は、まだわからない。

 

 でも、いつかはユキよりもかっこよくなりたいなぁ…。

 

 

*おまけ* 「あ」
「ん? どうしたの冴ちゃん」
「え、あ、ううん……なんか今唐突に懐かしい人思い出してさ。元気かな……あの頃ケータイ持ってなかったからアド知らないし、連絡とれないんだよね……」
「……」
「会いたいなー」
「…冴ちゃん?」
「? なに、類くん」
「……ううん、何でもないよ」

 そんな愛おしそうな表情をして、誰を思い出してるの。

(どうしよう、初恋の人だったりして…)
「類くん? なにそんな難しい顔してるの?」

 

fin
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突然やってきた冴過去話!本編で真弓みたいな子だすと類とからみづらいからできなかったんだよね。
その結果ここで総モテじみたことになって、さらに真由と名前が似てるっていう事故起きてるけど(^^;
いいんだ、次に短編で登場させる時は冴には「卓志」って読んでもらうようにするから!(え
幼い無自覚な初恋の話でしたー。また出てきてね卓志。読者様からの需要があるといいね卓志!今度は自覚して来いよ^^

 

(2011/9/12 加筆修正)
沙久